糸球体腎炎(実際には糸球体炎)は、糸球体(腎臓のフィルター、各腎臓の120万個のネフロンの一部)の炎症である。慢性糸球体腎炎は、糸球体の硬化を引き起こすこともあり、慢性透析患者の主な原疾患となっている。自己免疫性糸球体腎炎においては、糸球体の基底膜(GBM抗原)に対する自己抗体が生成される。抗GBM糸球体腎炎は、糸球体腎炎全体の0.5〜2%を占める。
グッドパスチャー症候群(肺腎症候群)は、1919年にアメリカのアメリカ人病理学者アーネスト・ウィリアム・グッドパスチャー(1886-1960)にちなんで名付けられた糸球体腎炎と肺出血の組み合わせからなる自己免疫性糸球体腎炎の病態である。この稀な症候群は、男性が女性の約6倍の罹患率で、主に若年成人期の男性で発症する。これは、急速進行性の抗基底膜糸球体腎炎と肺出血の併発によって臨床的に特徴付けられるが、肺出血が最初の徴候となることがある。
古典的なグッドパスチャー症候群を含むすべての抗GBM糸球体腎炎の主要な標的抗原は、基底膜lamina densaの網状構造にあるIV型コラーゲンのα3鎖のNC1領域である。これらの抗体は肺胞基底膜または糸球体基底膜に対する抗体であり、IIFTにより定性的・定量的に、抗-GMB ELISAにより定量的に検出される。呼吸器症状が無い場合は約60%、呼吸器症状を伴う場合は約90%の患者の血中にGBM抗体が検出される。その大半はIgGであり、IgAやIgMは少ない。病気の臨床的進行は抗体濃度と相関がある。血液検査の結果が陰性で抗GBM糸球体腎炎の疑いが続く場合は、腎生検を実施することが望ましい。
抗GBM抗体を有する患者では、ANCA抗体も有することが多い(>35%)。両抗体を有する場合は急速進行性糸球体腎炎や多発性血管炎性肉芽腫症(GPA)の可能性がある。したがって、腎疾患を有するANCA関連血管炎(AAV)患者には、ANCAおよび抗GBM抗体の同時検査を行うことが望ましい。
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