運動ニューロン疾患(MND)は、上位・下位運動ニューロンの変性を特徴とする神経変性疾患です。 MNDには、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性筋萎縮症、偽球麻痺が含まれます。 ALSは最も頻度の高いMNDであり、世界での発症率は年間10万人あたり約2人です。
ALSの初期段階では、筋力低下や腕や脚のけいれん、嚥下障害や構音障害などの非特異的な症状が現れます。その後、症状は全身に広がり、自身での歩行や意思伝達(発声)ができなくなるまで継続的に進行します。
のごく一部(ALS症例の5〜10%)で、さまざまな遺伝子変異が見つかっていますが、孤発性ALSの根本的な原因は、徹底的な研究にも関わらず未だ解明されていません。
ALSの診断基準の1つであるElEscorial基準は、臨床所見と筋電図検査(EMG)等による運動ニューロン障害の所見に基づいています。これらの診断基準は標準化されていますが、多数の運動ニューロンがすでに変性している疾患の後期段階でのみ有用です。臨床症状の申告から最終的な診断の確定までに、12か月以上かかることもあります。 ALS患者の平均余命が短いため、症状が進行する前に早期に診断し治療を開始することが重要です。特に初期段階でALSに類似した症状を呈する他の疾患(類似疾患:多発性神経障害、ミオパチー、封入体筋炎など)からALSを鑑別する必要があります。
神経損傷により放出される神経細胞骨格の主成分であるリン酸化ニューロフィラメントHサブユニット(pNf-H)濃度は、ALSのバイオマーカーとして有用です。 ALS患者の脳脊髄液(CSF)中のpNf-Hの濃度は、疾患の初期段階で有意に上昇します。 さらに、pNf-H濃度は運動ニューロンの変性レベルと相関しています。 いくつかの研究は、CSFのpNf-H値がニューロフィラメント軽鎖(NfL)よりもALSのより良い予後のマーカーであることを示唆しています。 血中のpNf-HレベルはCSFレベルと相関しており、診断される約18か月前から増加していました。 したがって、pNf-H濃度の測定は、ALSの鑑別や予後予測の補助的な検査として有用です。
Brochure: Neurofilaments in diagnostics - Biomarkers for neuroaxonal damage
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